私たちにできること。

3月11日、世界中を驚かせた稀有の大震災が日本を襲った。東日本大震災。
私は、その数日前、公園再開発の話をブログで紹介しようと書き、さて載せようかと思った矢先の出来事でした。大きな衝撃とともに、その原稿は棚上げにするしかありませんでした。「人々を癒す」「都会のオアシス」、そんなテーマが大震災に見舞われた刹那の日本にふさわしいはずもありません。

それから5か月経った今ならどうだろうかと考えました。
やはり、人々には「癒し」「潤い」「慰め」は、必要ですよね。
先日、私はその公園に行きました。小雨が降る中、子供と散歩している親子、犬を遊ばせている婦人、まだまだできたばかりの公園なので、風情があるとは言い難いものの憩いの場になっているのは確かでした。
そんな気持ちから、震災前に書いた話を、ここに載せることにしました。

 

『約7ヶ月におよぶ、公園づくり。』

梅が咲き、こぶしもつぼみを膨らませ、もうすぐ春の訪れです。
長期にわたった仕事もようやく終わり、春の息吹を待つこととなりました。
昨年7月から始まった公園の再開発の仕事、4月には一般に開放されます。
場所は、天王洲アイルにほどちかい臨海の公共公園です。
公園は東京湾の運河に面し、周囲には高層のマンション群が林立しています。

昨年の夏には、旧公園にあった樹木を借り移植する作業におわれました。
あの猛暑の中での作業です。樹木も辛かろう。炎天下の中での作業は、私たちにも苦役を迫りました。樹勢を気遣いながら、私たちは水分を多量に補給しつつの作業でした。

今年に入ってその樹木たちと新しく仲間になる樹木たちを、ようやく植え終えました。ケヤキ、イチョウ、クス、ウメ、サクラ、モチ、デイゴ…小流れにはネコヤナギ、センリョウ、ヤマブキ、シャガなどをはじめ、数多くの草木たち。遊歩道からの眺めを考慮しながら、レイアウトにイメージをかきたてつつの植え込み作業です。
このあたりの作業は庭師としての感性を問われるところです。
若き庭師、水尾さんはそこで妥協をしません。高木の向き、低木の配置、そこに感性が発揮されるし、また試されるのです。イメージは、毎日通って作業している間におのずと湧き出てくるのでしょう。ほぼ迷いがない。迷った時には、すぐ私にでも聞く。このスタンスは、いいと思う。年齢差、20歳オーバー。年配者に考えを求める姿勢は、いいしうれしいものでもある。

この公園の造園仕事に、かかせない一人の若者がいます。去年入社した寺内君です。若干22歳、3人の子供もち、力持ち、わが社のホープである。毎日のように彼は,水尾さんと通って、水尾さんの特訓を受けました。

この仕事が終わりました。

若者は私にこういいました。「春になったら、嫁と子供を連れてここに遊びに来たい」と。

大都会の高層マンションに暮らす人々に、きっとこの公園は少なからず潤いをあたえるであろうと思いながら、潮風の中で腰に手を当てる私でした。

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